2月21日、金属アレルギーの講演会に、ささき矯正歯科ドクター一同、参加してまいりました。
我々矯正医は、金属アレルギーの患者様に度々遭遇いたします。重度の場合は、ワイヤーを使っての矯正治療が出来ないこともあるのです。よって、大いなる興味を持って会場に向かいました。

昭和大学 顎口腔疾患制御外科学教室 教授・角田左武郎先生をお招きしての、「金属アレルギーと歯科疾患」と題しての講演会です。蒲田歯科医師会・稲葉会長の挨拶に続き、学術担当理事・院長佐々木の講師紹介を持って、会が始まりました。

まず、アレルギーの総論的な解説です。歯科金属アレルギー反応は IV型アレルギー反応であること、発生部位や時期が多様化しており原因の確定を難しくしていること、男女差では女性に多く、30歳くらいと50〜60歳くらいが多いこと等のお話がありました。
ついで、症状について、接触性皮膚炎(舌炎、口内炎、舌痛症、口腔周囲炎)の他、掌蹠膿庖症(しょうせきのうほうしょう)、口腔扁平苔癬(こうくうへんぺいたいせん)、汎発性(はんぱつせい)皮膚炎、難治性湿疹などの全身性皮膚炎の解説がありました。つまり、直接金属が触れているところだけではなく全身に症状が及ぶこともあるのですね。抗原である金属の詰め物や冠を除去した後も、症状の改善には、かなりの時間を要するとのこと。うーむ、これは困った…(..)。
また、金属アレルギーが疑われる患者様には、専門外来や皮膚科でパッチテストを受けて頂いた方が良いこともわかりました。

ここで皆様にわかりやすく少し解説を加えますね。
金属アレルギーは、金属が汗などで溶け出してイオンとなり、体内の蛋白質と結合して抗原性(アレルギー性)を獲得することにより起こります。(金属そのものは生体に対して抗原性を示しません。) 
また、これはIV型アレルギー(遅延型アレルギー)に属するもので、金属に接触してすぐには症状が現れません。つまり、喘息やアトピー性皮膚炎、花粉症などのようなI型アレルギー(即時型)のように、アレルゲンに接触して短時間に症状が現れることはなく、数日〜数ヶ月、時には、数十年経ってから突然発症することもあります。
アレルゲンとなる金属の種類は、Ni(ニッケル)、Co(コバルト)、Cr(クロム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Au(金)、Hg(水銀)など様々あるのですが、Ni、Cr、Coなどは矯正材料に多々含まれているのです。(;_;)

パッチテスト(PT)の結果、例えばNiのみにアレルギーがあるとわかったのなら、我々矯正歯科では、Niを含まないワイヤーやブラケット(歯につける金具)を使用して、矯正治療してゆくことが可能です。しかし、複数の金属に反応が見られたり、またPTの結果が+なのか、++++と強い反応が出ているのかによっても、矯正治療が可能かどうかが変わってきてしまうのです。

ささき矯正歯科ではそのような患者様のために、以前のブログ(06年9/2606年7/4)で学会発表の様子を書かせて頂いたように、Essix(エシックス)、Invizalign(インビザライン)等に代表される、ペットボトルのような透明樹脂製で出来た装置も研究中です。もちろん、この装置にも利点欠点があり、全ての症例を完璧に治療できる訳ではありません。が、しかし、金属アレルギーがあるからと矯正治療をあきらめていた皆様、私どもで良ければ、どうぞ一度御相談にお出で下さいませ。
(小川)

Prof.角田(写真:角田教授、小川の質問にもやさしく答えて下さいました(^^))